リスクマネジメントの観点からみた「許認可管理」
2017.06.11更新
いつもはBCPについて書いていますが、今回はもう少し広い意味で、リスクマネジメントの観点からみた「許認可管理」について書いていきます!
廃業リスクを回避するためのお話です。
BCPに許認可管理を入れることはとても有効
リスクマネジメントとは、リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失を回避または低減をはかるプロセスのことで、BCPもリスクマネジメントのひとつであると考えられます。
以前の記事にも書いているところですが、BCPとは、Business Continuity Planの略で、事業継続計画と言うものです。
BCPは自然災害など、事業の継続に影響を与えるような災害が発生したときに、事業に対する影響を最小限に抑え、最短で事業を再開できるようにするための手段を予め定めておくものです。
BCPに許認可管理を入れることは事業の継続にはとても有効なことです。
もっと言えば、リスクマネジメントの観点から、BCPに許認可管理を入れたうえで、さらに、許認可を維持するための要件確認、万一要件を欠くような事が起こった際の事前準備を日頃からするべきだと思います。
とはいえ、企業内で許認可を維持管理するのは簡単ではありません。
許認可を維持管理するためには、専門知識と経験が必要だからです。
専門知識、経験を有する従業員などがいない場合は、行政書士等の専門家にお任せするのも良いかもしれません。
許認可管理は、企業における優先順位が低い!?
許認可の維持、管理は事業の継続に直結するにもかかわらず、「許認可管理」についてまでBCPなどに予め定めている企業はとても少ないように思いますし、経験上、大企業(実は上場企業)でもとても意識が薄いところだと思っています。
経営者、担当者の皆さん、
御社が許認可を失った場合の損失を把握されてますか?
一度取得した許認可は簡単に無くなることなどないと思ってはいませんか?
例えば、建設業がメインの企業において、建設業の許可を廃業せざるを得なくなったら致命的ですよね?
許認可は取得すれば万事OKではありません。
許認可を取得した場合、実は取得した後の維持、管理が大変なのです。
以前の記事で触れましたが、BCPの実行を要するような災害は、一般的に想像されやすい自然災害のみではなく、企業における事故や、内部不祥事などにも及びます。
例えば、許認可の要件を満たすためのキーパーソンに死亡等の事故があった場合、許認可の要件を欠くことになるため、最悪の場合はその事業を廃業することになってしまいます。
もちろん、万が一の事態に備えてキーパーソンの代わりが企業内にいれば結果的に問題ないことがほとんどですが、それでも許認可を失ってしまうことが稀にあります。
許認可を有する企業においては、このような事故が発生した場合に許認可を維持するための手続きの流れ、チェック事項などについてはBCPに定めるべきでしょう。
許認可はどんなときに失うか
許認可を失ってしまうパターンはいろいろ考えられますが、主に、次のいずれかに該当した場合に許認可を失ってしまいます。
1.人的要件を欠いた場合
人的要件は、最も廃業を選択せざるを得ない状態になりやすいところです。
具体的には、建設業許可で言えば「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」、宅建業免許で言えば「専任の宅地建物取引士」、建築士事務所で言えば「管理建築士」などが不在となると、廃業となってしまいます。
とりわけ、宅建業には若干の救済措置があるものの、建設業ではどうしようもない状況なってしまうことがよくあります。
役員変更や人事異動、キーパーソンの退職などに気をつけましょう。
2. 物的要件を欠いた場合
よくある事例は、営業所要件を欠いてしまうことです。
具体的には、許認可を有する会社の営業所にグループ会社等、他法人が同居している場合などが多いです。
許認可を有する会社の多くは、他の法人と明確に区分されている必要があります。つまり、別部屋であったり、パーテーション等で区切られていたりといったことが求められます。
万一、行政庁による現地調査などがあって、要件を欠いていることが判明し、それが悪質と判断されたら許認可の取消なんてことも考えられます。
3. 財産的要件を欠いた場合
例えば、建設業許可の特定建設業などでは一定の財産的要件が定められていて、決算時に要件をクリアする必要があります。
定められた水準をクリアしていないと、許可の更新をすることが出来なくなるなどのリスクを伴います。
リスクマネジメントとして、「ヒト」、「モノ」、「カネ」に変化があったとき、または、ありそうなときには許認可への影響に気をつけましょう!