組織再編と廃業(事業停止)リスク
2017.10.09更新
今回から次回にかけては、少し法律的な話、「組織再編と廃業(事業停止)リスク」について書いてみようと思います。
組織再編のニーズ
そもそも組織再編って何?って方も多いと思います。
組織再編とは、必ずしも一義的ではありませんが、一般的には会社の組織・形態を変更する会社法上の法律行為であると言う事ができます。
その具体的な類型としては、「合併」や「会社分割」、「株式交換」や「株式移転」が挙げられます。
用語解説
合併とは
2つ以上の会社が合併契約を締結し、権利義務を包括的に承継させることにより、一部または全部の会社を消滅させて、1つの合併会社を存続または新設させる行為のことを言います。
1つの会社を消滅させて、別会社に対して包括的に権利義務を承継させる「吸収合併」と、2つ以上の会社を消滅させて、新設する会社に対して包括的に権利義務を承継させる「新設合併」とがあります。
会社分割とは
会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に包括的に承継させる行為のことを言います。
分割契約を締結し、別会社に対して包括的に権利義務を承継させる「吸収分割」と、分割計画を作成し、新設する会社に対して包括的に権利義務を承継させる「新設分割」とがあります。
株式交換とは
ある会社の発行済株式の全部を他の会社に取得させる行為のことを言います。
株式移転とは
ある会社の発行済株式の全部を新設する会社に取得させる行為のことを言います。
近年、このような組織再編のお問い合わせがとても増えています。
組織再編の目的は企業毎に異なるところですが、効率的な事業運営や事業部門拡大等を前提として、M&A、企業の節税対策、同族会社の場合は相続対策や資産承継などを目的とされるケースが多いように思います。
組織再編(とりわけ合併や会社分割)が事業の継続に影響を与えるとき
組織再編(合併や分割)を行った結果、事業が停止してしまう…当初は効率的な事業運営を目的としていたのに、いつのまにか組織再編を行うこと自体が目的となってしまっているような、まさに本末転倒の事態が発生してしまうことがあります。
経験上、許認可の承継がその原因となるケースが多く、具体的には、次のようなケースが考えられます。
- ① 組織再編によって許認可を失ってしまったケース
- ② 組織再編をするため、効力発生前に許認可が無い期間(無許可期間)が生じてしまったケース
- ③ 効力発生日までに承継会社において許認可の取得が間に合わない(効力発生後に許認可が無い期間(無許可期間)が生じてしまった)ケース
いずれも事業の継続に大きな影響を与える事例です。
何故このようなことになってしまうのでしょうか。
一番の理由は、許認可には組織再編が想定されている許認可と想定されていない許認可とがあるところだと考えられます。
組織再編を想定していない許認可(結構多いです)の場合、組織再編の効力発生と同時に法人格が変わりますので、承継会社においてもともと許認可を取得していないと、新たに許認可を取得する必要があるのです。
他にも理由は考えられますが、主にこの理由によって上記のようなケースが生じてしまうのでしょう。
組織再編のスケジューリングの難しさ
有効な組織再編を行う際は、スケジュールの調整が一番大事になります。
端的に言えば、合併や分割等の効力発生日をいつにするか、それまでに誰がいつ何をするか、ということです。
組織再編を行う場合、顧問弁護士や税理士、司法書士や行政書士、コンサルタント、場合によっては銀行や民間企業など、様々な立場の様々な専門家等が同時に介入するケースが多いと思います。
もちろん、クライアントの目的を達成するために各専門家が動くわけですが、各専門家は当然それぞれ専門性を持っており、業務内容が異なります。そのため、スケジュールの調整が難しくなるのです。
例えば、税理士さん的には決算期までには効力発生を…とか、司法書士さん的には登記申請をするためにはいついつまでに決議を…とか、行政書士さん的にはそもそも決議のまえに、許認可の承継可否や許認可を失わないためのスキームになっているかを確認したい…と言った具合です。
また、士業の先生方がスキームを固めた後で、銀行さんからそのスキームでは融資出来ません…と言われてしまうこともあります。特に許認可を取得されている企業の組織再編では、最低でも半年前くらいから綿密な打ち合わせが必要だと思います。
次回は組織再編から生じた廃業や事業停止の具体的な事例とその対策について書いてみます!