株主総会におけるBCPに関する質疑応答例
2025.04.06更新

直近1年以内(2024年~)に開催された日本企業の株主総会で BCP(事業継続計画) に関する議題や質疑応答があった具体的事例を挙げてみます。
各社の株主総会で実際に取り上げられたBCPに関する説明や、株主からの質問と企業側の回答の要点を掲載します。
※出典として掲載したリンク先は、各社のIRサイト上で公開されている株主総会の質疑応答要旨や書き起こし資料(PDF等)です。
住友商事株式会社(第156期定時株主総会)
開催日:2024年6月21日
株主からBCP対応について質問があり、会社側は「マルチハザードBCP」を導入していると説明。人員・オフィス・ITシステムなど重要資源が制限される状況下で事業を継続するための計画であり、パンデミック時には在宅勤務の推進や各組織での業務継続手順書策定によって対応を強化したと述べる。
また「東京本社では首都直下型地震など大規模災害発生時の初動対応手順や緊急対策本部の体制・役割を定めた災害対策マニュアルを整備し、財務・経理・物流・ITシステムなど本社機能ごとの対応手順も策定。各部署でもビジネス復旧・継続手順を策定しており、国内外拠点・グループ各社のBCP見直しも順次進めている」旨を回答。
東京エレクトロン株式会社(第61期定時株主総会)
開催日:2024年6月18日
株主から国内生産拠点におけるBCP対応について質問があり、会社側は過去の東日本大震災や熊本地震で早期復旧を達成できた経験を活かし、建物の耐震補強やサプライチェーンへの適切な対策を講じていると説明。
また自社の生産拠点を国内中心に置くことのメリットとして、離職率が低く情報セキュリティ上のリスクが少ないこと、国内で開発・生産を一貫して行うことで高い品質を作り込めること、そして日本の充実したサプライチェーンを十分活用できることなどを挙げ、BCPの観点でも国内拠点の強みを強調。
ソフトバンク株式会社(第38回定時株主総会)
開催日:2024年6月20日
株主から首都圏で大震災が発生した場合のBCPについて質問があり、ネットワーク障害対策への不安について言及される。これに対し、会社側は通信インフラのBCP対策として「監視センターを関東と関西の2箇所に設置」しネットワーク運用部隊を2分割、さらにシステム自体も1箇所にとどまらず3重に分散して配置していると説明。
これにより計6箇所の冗長化構成を実現しており、「仮に首都圏で大きな地震が起きても速やかに関西側に切り替えて対応できる容量を確保しており、強固なネットワークを構築済み」であると回答。
日本企業でBCPが株主総会における重要な関心事項に
上記の事例に止まらず、日本企業でBCPが株主総会における重要な関心事項となっていることが分かります。株主からは、災害時や緊急時に会社がどのように事業を継続し対応するのか、具体的な施策を問う質問が相次いでいます。
企業側もそれに応え、事業戦略への組み込み、過去の災害から得た教訓を踏まえた設備投資や体制強化、ITシステム・ネットワークの冗長化など、BCP強化策を具体的に説明しています。
特に、近年は新型コロナウイルス禍や大規模災害への備えとして、パンデミック対応の在宅勤務制度整備や地方分散によるバックアップ体制の構築など、各社が自社の事業特性に応じたBCPを策定・実行していることがうかがえます。
BCPが企業の中長期的な経営課題として定着している
また、単に非常時に備えるだけでなく、「平時から事業継続力を高める」(例:在庫拡充や複数拠点での生産・データ管理)取り組みも強調されており、BCPが企業の中長期的な経営課題として定着している様子が読み取れます。
以上のように、直近の株主総会では業種を問わずBCPに関する議論が活発に行われており、株主も企業も事業継続への備えに高い関心を持っていることが明らかです。これは企業価値の維持・向上やステークホルダー保護の観点から、BCPが重要な経営課題となっている現れと言えるでしょう。
各社の具体的な取り組み事例は、他企業や中小企業にとってもBCP策定・強化の参考となります。御社のBCP策定の際にも各社BCPの対応状況がどのようになっているのか、企業のIRサイトをご参考にされてみてはいかがでしょうか。