運送事業者のBCP策定率とリスク
2017.10.02更新
今回は、運送事業者のBCPについて書いていきます!
運送事業者のBCP策定率とリスク
帝国データバンク社において実施された「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2017 年 5 月)」の調査結果によると、運送事業者のBCP策定率は17.6%だったそうです。業界別では比較的高い策定率です。
また、同調査で業界別に重要視されているリスクについても調査されています。
その調査結果によると、運送事業者(倉庫業者を含む)が懸念しているリスク上位3つは次の通りでした。
- 1位 自然災害 75.8%
- 2位 物流の混乱 47.1%
- 3位 設備の故障 39.2%
やはり自然災害が一番のリスクと考えられているようです。
物流の混乱や設備の故障が上位に入っていることも、事業の性質から考えると納得です。
東日本大震災が運送事業者に与えた影響
東日本大震災の時、実際に運送事業者にはどのような被害が発生したのでしょうか。
総務省統計局が公表している「東日本大震災がサービス産業に与えた影響」によると、運送事業者(運輸業)に生じた影響は、次の通りだったようです。
有効回答数は1,021事業所で、そのうち「影響あり」と回答されたのは、62.2%でした。
具体的には次ような影響があったそうです。
- 1位 需要減 37.7%
- 2位 原材料や物流の滞り 11.6%
- 3位 休業や営業時間の短縮 11.0%
なお、運輸業の中では「道路旅客運送業」への影響が特に大きかったようです。
「影響あり」と回答されたのは74.8%で、広告業の81.9%に続いて2番目に大きな割合でした。
具体的には次のような影響があったそうです。
- 1位 需要減 58.3%
- 2位 休業や営業時間の短縮 12.2%
- 3位 原材料や物流の滞り 4.7%
「需要減」や「休業や営業時間の短縮」は企業の売上げに対して直接的なダメージを与えます。
そのような中でも従業員に対する人件費や車両の維持費等は常時発生します。
このような影響にも耐えられるように、キャッシュフローの構築とBCP策定を検討してみてはいかがでしょうか。
運送事業の特徴
許認可の取得を必要とするビジネスは基本的に維持・管理が大変です。
運送業許可も例外ではなく、維持・管理が簡単ではありません。
建設業や宅建業と比較しても、若干ではありますが、クセがあるように思います。
以前の記事でも紹介しましたが、「変更認可」という手続きが存在することも理由の一つと言えるでしょう。
また、行政処分についても特徴があります。
運送事業の場合、個別具体的に行政処分の内容が定められています。
例えば、変更認可違反で「10日車」といった感じです。
「10日車」ってあまり聞き慣れない言葉ですが、運送事業の行政処分の基本的な考え方として「処分日車制度」という制度があります。
10日車とは、車両1台が10日間使えなくなるという意味です。
また、10日車毎に1点の違反点数が付けられて、処分日前3年間の累積違反点数が50点で営業停止処分、80点で許可の取消処分となります。
運送事業者には、定期的に監査が入ります。
監査により累積違反点数が50点を超えてしまって、営業停止等の処分を受けてしまうと、事業の継続に大きな影響が生じますので、日頃の法令遵守がとても大切です。
運送業許可の管理体制もきちんと整備しましょう!
運送事業者のBCP策定
運送業には、大きくわけて、荷物を運ぶ「貨物自動車運送事業」と、人を運ぶ「旅客自動車運送事業」とがあります。
従って、具体的な事業に合ったBCPを策定する必要があります。
公益社団法人全日本トラック協会の「中小トラック運送事業者のためのリスク対策ガイドブック」や一般社団法人日本物流団体連合会の「自然災害時における物流業のBCP作成ガイドライン」などを参考にするのも良いかもしれません。