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BCPコラム

BCPの事前準備「主要業務の検討とその判断基準」

2017.05.21更新

今回は、BCPを策定するために必要な事前準備のひとつ、
主要業務の検討とその判断基準」についてです。

主要業務の検討

BCPを策定するにあたって、守るべき業務を特定することは極めて重要です。

全ての業務を対象としてBCPを機能させることは不可能と言っても過言ではないくらい難しいですし、仮に策定したとしても、それが有効に機能するとは思えません。

特に中小零細企業においては、経営資源に限りがあるため、不可能と言ってもよいでしょう。
そこで、主要業務を検討する必要がでてくるわけです。

この主要業務を検討する作業を事業インパクト分析(BIA)といいます。

企業に対するダメージを最小化することが可能

業務が止まってしまった場合の損失等を各業務毎に分析し、優先すべき業務から最短で再開できるようにBCPを策定することで、企業に対するダメージを最小化することが可能となります。

業務のうち、どの業務が重要かについては役員も従業員も、なんとなくわかっていると思います。

しかし、そのなんとなくわかっている主要業務が、BCPが実行される場面において本当に重要な業務かどうかを検討して決定する必要があります。

主要業務を検討するにあたり、判断を間違うとどのような結果となるのか、次のような事例も考えられます。

【事例】主要業務の判断を間違うとどのような結果となるのか

ある年商4億円弱の2つの企業(A社とB社)に、3つの柱となる事業(事業毎の月商を500万円、1,000万円、1,500万円と仮定)があって、それぞれを担当する3つの事業部があったとします。

A社:年商4億円弱
第1事業部:月商500万円 / 第2事業部:月商1,000万円 / 第3事業部:月商1,500万円
B社:年商4億円弱
第1事業部:月商500万円 / 第2事業部:月商1,000万円 / 第3事業部:月商1,500万円

【事例その1】各事業部の全ての業務を主要業務としたA社の場合

A社では、企業全体の協力体制が築けず、各事業の全ての業務を主要業務と定め、主要業務への影響を最小限に抑え、最短で各業務を再開すべく、事業部毎にBCPを実行しました。

各事業部は、自己の事業部の利益を優先的に考えるのが普通かと思います。

その結果、災害発生月の翌月における各事業部の月間売上高が200万、300万、500万(企業全体の月商が1,000万円)まで落ち込みました。

平均月商から△2,000万円となりました。

【BCP実行前】
A社:年商4億円弱
第1事業部 月商500万円
第2事業部 月商1,000万円
第3事業部 月商1,500万円
月商2,000万円
【BCP実行後】
A社:年商4億円弱
第1事業部 月商200万円
第2事業部 月商300万円
第3事業部 月商500万円

月商1,000万円 2,000万円のマイナス

これは、企業の全ての業務を守ろうとした(各事業部毎に主要業務を判断した)結果です。
BCPが実行されるような災害が発生すると、経営資源が不足するので当然の結果だと思われます。

ではひとつの主要業務を予め定めて、限られた経営資源を効率的に集中した場合はどうでしょうか。

【事例その2】企業全体の主要業務を絞り込んだB社の場合

A社と同条件の年商、事業部があるB社では、売上高が大きい業務を主要業務と定めました。

BCPの実行に伴い、各事業部を統括する統括部長の役職を設け、予め定めた主要業務への影響を最小限に抑え、最短で事業を再開すべく、企業全体でBCPを実行しました。

その結果、災害発生月の翌月における各事業部の売上高は、100万円、200万円、1300万円(企業全体の月商は1,600万円)となりました。

平均月商から△1,400万円となりました。

【BCP実行前】
B社:年商4億円弱
第1事業部 月商500万円
第2事業部 月商1,000万円
第3事業部 月商1,500万円
月商2,000万円
【BCP実行後】
B社:年商4億円弱
第1事業部 月商100万円
第2事業部 月商200万円
第3事業部 月商1,300万円

月商1,600万円 1,400万円のマイナス

これは売上高に注目して主要業務を決定した結果で、実にA社とは月商で600万円の差が生まれました。

さらには月商で600万円の差が出たことにより、経営資源の回復を早めることも可能であることから、主要業務が通常の売上高まで回復するスピードもA社とは比較にならない結果となることも予想されます。

上記の例は本当に極端なものですので、必ずしも同じ結果にはなりませんが、イメージはもっていただけたかと思います。

主要業務の判断基準

主要業務の判断を誤ってしまうと、せっかく策定したBCPの効果が半減してしまいます。

何を主要業務とするかの判断は難しいかもしれませんが、BCPを有効化するためには必須の作業となりますので、しっかり考えていきましょう!

では、企業が主要業務を判断するための基準となる考え方をいくつか紹介します。

  • ① 売上高や利益率の高い業務を選択する
  • ② 業務の停止によって生じる、将来的な損失が大きい業務を選択する(競合他社が多い業種など)
  • ③ 売上高や利益率、損失は大きくなくても、将来的な利益を鑑みて、主要な取引先との関係を重視した業務を選択する
  • ④ 売上高や利益率、損失は大きくなくても、企業の歴史や想いを重視した企業理念の根幹となる業務を選択する
  • ⑤ 直接的な利益率や損失に影響はないが、止まってしまうと連鎖的に他の事業への影響が発生する業務を選択する
  • ⑥ 復興事業や被災者支援など、社会性を重視した業務を選択する

これらを検討する際には、企業と同じ目線で一緒に考えてくれる士業などの専門家やコンサルタントなどと相談しながら進めるのも良いかもしれません。