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BCPコラム

不動産業とBCP~賃貸住宅管理業者のリスクと事前対策~

2017.08.28更新

今回も「不動産業とBCP」をテーマに書いていきます!

前回の記事で書いたとおり、不動産業には開発・分譲業、流通業、賃貸業、管理業など、いろいろな業態があります。

効果的なBCPを策定するには、業態毎に策定する必要があります。
業態毎に具体的なリスクと事業を継続するための対応が異なるからです。

今回は、賃貸の仲介業との相性が良いと思われる、賃貸住宅管理業のBCPについて書いてみたいと思います。

賃貸住宅管理業とは

不動産管理業には、主にオフィスビルの管理や駐車場の管理、住宅の管理などがあると考えられますが、今回は比較的規模の小さい賃貸住宅を管理している事業者を対象に考えてみましょう。

賃貸住宅管理業を営む事業者の業務形態としては、宅地建物取引業の免許を取得して仲介業務も行う事業者と宅地建物取引業の免許が不要な管理業務のみを行う事業者との2パターンが考えられます。

割合的には仲介と管理を両方行う事業者が多いと思われます。

仲介業務は、入居者の募集、賃貸借契約の締結をすることが主な業務で、仲介手数料(およそ賃料1ヶ月分)で収入を得る業態です。

一方、管理業務は、入居者がいる賃貸物件の維持・管理が主な業務です。

具体的には賃料の集金(代理受領)や入居者からの苦情対応、契約の更新や解約についての契約管理、賃貸物件のメンテナンス(プロパティマネジメント業務)などを行いますが、その業務範囲はオーナーとの業務委託契約の内容に基づくため、業務範囲は一律ではありません。

収入源は管理委託料となりますが、契約内容によるところであるため、こちらも一律ではありません。

賃貸住宅管理業者のリスクと事前対策

賃貸住宅管理業を営む場合、原因はいろいろ考えられますが、生じうるリスクとその事前対策を考えてみます。

①契約書や台帳など、重要書類の喪失

重要書類を喪失してしまう原因としては、大地震による建物の倒壊や津波などの発生、火災、人的ミスなどが考えられます。
重要書類の喪失を防止するための対策としては、書類をPDFなどデータ化して保管することや、人的ミスを防ぐために文書管理規程などの社内規則を策定する方法などが有効です。

②データの消失やシステム障害などのシステムリスク

データの消失やシステム障害などの原因としては、サーバーの物理的な損壊やコンピュータウイルスに感染してしまった場合、または人的ミスなどが考えられます。
これらを防止するためには、バックアップを確実に行うこと、セキュリティ対策を適切に行うこと、信用できない添付ファイルを開かないなどが有効と考えます。

③ライフラインの供給停止

ライフラインの供給停止は、自然災害が原因で発生するケースが多いです。
賃貸住宅管理業者は、自社のライフラインの供給停止が発生しても事業継続に影響がありますが、管理物件のライフラインの供給停止にも対応する必要があります。
事前の対策としては、入居者からの問い合わせ対応の整備(固定電話以外の連絡手段の整備)などが効果的ではないでしょうか。

④従業員の出勤困難

従業員が出勤困難となる原因としては、自然災害による交通機関のマヒや感染症などが考えられます。
事前にできる対策としては、自宅などでも通常業務ができる体制整備(テレワークの導入など)がとても有効と考えます。

⑤物件のオーナーと連絡がとれない、オーナーの行動不能

自然災害などの緊急時には、オーナーと連絡がとれない、オーナーの意思確認ができないといったことも想定されます。
事前の対策としては、オーナーへの連絡手段を複数確保すること、オーナーの意思確認がとれない場合はオーナーの親族が介入してくる可能性もあるので、予め代理権の確認方法などを取り決めておくことが有効でしょう。

⑥管理物件の滅失や損傷

自然災害を原因として、管理物件が損壊する可能性も考えられます。
この時、物件が滅失した場合と、滅失に至らない程度の被害が発生した場合とで、対応が大きく異なります。

建物としての効用を失っている場合は滅失と判断することができ、最高裁の判例によると滅失は賃貸借契約の終了事由となると判断されていることから比較的対応は容易になりそうです。
しかし、滅失に至らなかった物件については損傷の程度によりますが、民法上はオーナーの費用負担によって修繕義務が生ずるところ、オーナーの理解を得ることが難しいケースや入居者からの賃料減額請求の問い合わせ対応など、賃貸住宅管理業者の業務ボリュームが増えることが想定されます。

事前対策としては、業務委託契約時、オーナーに有事の際の必要な対応(費用負担など)について十分に説明すること、従業員が民法や借地借家法の理解を高めること(勉強会の開催など)、建物の損傷などが発生した場合の初動対応をマニュアル化することなどが有効だと思われます。

賃貸住宅管理業者のBCP

賃貸住宅管理業者のBCPを策定するときは、上記リスクと事前対策も参考に策定を進められると良いと思います。
「不動産協会事業継続計画ガイドライン〜オフィス賃貸事業編〜」を参考にされても良いかもしれません。